満員電車という逃げ場なき檻
大学2年の梅雨時、午前8時過ぎの小田急線は最悪の混雑だった。湿気と乗客の熱気で車内は蒸し風呂のようでありながら、吊り下げられたエアコンからは冷たい風が局所的に吹き下ろしていた。私はお気に入りの白いシフォンブラウスに、膝丈のタイトなデニムスカートを合わせていた。足元は素足にベージュのパンプスだったが、冷房の直撃を受けた足首はすっかり冷え切っていた。髪はハーフアップに整えていたものの、車内の熱気と突然這い上がってきた体温の上昇で、顔の周りの後れ毛がじっとりと張り付いていた。
最初の異変は、急行電車が登戸駅を出発した直後だった。下腹部がギューッと握り潰されるような、重苦しい便意が突如として私を襲った。次の停車駅である成城学園前駅までは、あと10分近くかかる。満員電車の奥深くに押し込められ、周囲をサラリーマンや他の学生たちに囲まれた私は、物理的にも社会的にも完全に退路を断たれていた。
「嘘でしょう、ここで……?」と額に冷や汗がにじむ。電車がポイントを通過するたびにガタガタと大きく揺れ、その振動がダイレクトに私の括約筋を直撃した。私は吊り革を握る右手に全ての体重をかけるようにして、左手はカバンを抱えながらさりげなく下腹部を強く押し付けた。波が押し寄せるたび、私の内ももは引きつるように交差され、パンプスのヒールが床をカツカツと不規則に叩いた。お腹の中で激しい「げり」が暴れ回り、今すぐ全てを吐き出そうと出口をノックしている。
第二波は、成城学園前駅の手前でやってきた。これまでに経験したことのない激しい痛みに、私は思わず「っ……」と息を止めた。周囲の人にバレないよう、必死に表情を取り繕おうとしたが、眉間はきつく寄り、目は血走って泳いでいた。薄手のファンデーションが冷や汗でドロドロに溶け、目元に引いたアイラインが涙で少し滲んでいくのが分かった。脳内では「あと3分、あと2分」と駅までの時間を必死に逆算していたが、踏切の非常ボタン作動による急停車という最悪のトラブルが発生し、私の計算は一瞬で崩れ去った。
急ブレーキによる衝撃をこらえるため、全身の筋肉が強制的に緊張させられた瞬間、お尻の門門が開きかける感覚に襲われた。私は悲鳴を飲み込み、狂ったようにお尻を締め付け、膝を内側に折り曲げて耐えた。このまま車内で決壊すれば、私の女子大生としての生活は終わる。その恐怖だけが私を支えていた。 結局、電車は5分後に運転を再開し、私は成城学園前駅のホームに吐き出されると同時に、這うようにして女子トイレへと駆け込んだ。個室に入り、衣服を脱ぎ捨てて便座に座り込んだ瞬間の快感は、言葉にできないものだった。今でも満員電車のブレーキ音を聞くたび、あの日の湿気と限界の足の震えを思い出す。
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