新人OLの初プレゼンと胃腸の叛乱
社会人1年目の秋、私は新商品の社内向け企画提案という、人生初の重要プレゼンテーションの場に立っていた。会議室には上司や役員たちがずらりと並び、独特の重苦しい空気が漂っていた。私は卸したての堅い黒のリクルートスーツに、窮屈な白い長袖シャツを第一ボタンまできっちりと留めていた。足元は3センチヒールの黒いビジネスパンプスで、手にはプレゼンの資料を印刷した紙の束を握りしめていた。髪は後ろでタイトな黒のヘアゴムでまとめ、毛先まで整えていたが、緊張による手の震えで資料がガサガサと音を立てていた。
プレゼン開始の直前、張り詰めた緊張感が引き金となったのか、私のお腹の奥で急激なガスだまりと、強烈な「げり」の初期症状が発生した。下腹部が熱くなり、ゴロゴロと不穏な音が這い上がってくる。
「今だけは絶対にダメ……」と私は心の中で絶叫した。これから私の発表が始まるのだ。マイクの前に立ち、スクリーンの前に進み出なければならない。もしここでトイレに駆け込めば、私の社会人としての信用は初手から完全に失墜する。その恐怖と社会的な檻が、私を冷酷に縛り付けた。プロジェクターの明かりが私を照らし、逃げ場はどこにもなかった。
私はマイクを握り締め、背筋を不自然にピンと伸ばして壇上に立った。発表を始めると同時に、第二波の激しい腹痛が襲ってきた。一歩足を進めるたびに、括約筋に激しい負荷がかかる。私は説明用のポインターを持つ手に全神経を集中させ、もう片方の手は後ろに回して、スーツのジャケットの裾をギュッと握りしめて冷や汗を耐えた。額や首筋からは大粒の汗が吹き出し、入念に施したオフィスメイクが汗の筋で崩れていくのを感じた。足元は内股で、両方のふくらはぎを密着させ、パンプスの爪先を床に押し当てることでどうにか下半身を固定していた。
お腹の中の波は容赦なく押し寄せ、私の内臓をグチャグチャにかき乱した。私はプロジェクターの画面を説明しながら、頭の中では「あと5分、スライドはあと3枚」とそれだけを念じていた。腹痛の波が襲う瞬間、言葉が少し詰まり、声が震えてしまうのを誤魔化すために、不自然に声を大きく張り上げた。役員たちの視線が私の下半身に向けられているのではないかという妄想に襲われ、恥ずかしさと絶望で頭の芯がカッと熱くなった。
なんとか発表を終え、「ありがとうございました」と一礼した瞬間、括約筋がふっと緩みそうになり、私はその場に数秒間フリーズした。冷や汗でぐっしょりと濡れたスーツが肌に張り付く中、私はロボットのような歩幅で会議室を後にした。 すぐに給湯室の脇を通り抜けてオフィスのトイレに滑り込み、個室の鍵をかけた時の安堵感は今でも忘れられない。今でも重要な「会義」の資料を作成するたび、あの黒いスーツに染み込んだ冷や汗の匂いと、限界の足の震えが蘇る。
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