排泄物語

社外セミナーの重要スピーチと最後の防衛線

投稿者: さき(saki) エピソード集2分で読めます閲覧 1,0723.7(6件)

昨年の秋、私は業界の合同カンファレンスに伴う社外セミナーに参加していた。会場は都内のホテルの大広間で、全国から何百人ものビジネスパーソンが集まり、ステージ上では著名な特別ゲストによる基調講演が行われていた。私は動きやすさを重視したストレッチ素材の黒いセットアップスーツに、淡いピンクのブラウスを合わせていた。足元は歩きやすい5センチヒールの黒いプレーンパンプス。髪は後ろで上品なハーフアップにまとめ、バレッタで留めていたが、冷や汗のせいで首筋が冷たく冷え切っていた。

セミナーの後半、特別ゲストの熱いスピーチが佳境に入った頃、私のお腹の中で突然、破壊的な「げり」の波が発生した。昼食にケータリングで出されたスパイスの効いた料理が、私の敏感な胃腸を刺激したのだろう。下腹部がゴロゴロと鳴り、激痛とともに冷たい脂汗が全身から噴き出した。

「ここで席を立つわけにはいかない……」と私は焦った。私の席は前方のほぼ中央で、すぐ隣には他社の役員や自社の上司が座っていた。静まり返った大広間で、スピーチの最中に席を立って退室すれば、あまりにも目立ちすぎる。そのプレッシャーが、私を椅子に縫い付けた。

スピーチが残り20分と告げられた瞬間、決定的な第二波が襲ってきた。これまでの人生の経験から、これが最終防衛線を破るレベルの激痛であることを悟った。私はパンプスの中で足の指を思い切り丸め、太ももをきつく擦り合わせてお尻の括約筋を極限まで引き締めた。セットアップのジャケットのポケットに両手を突っ込み、拳を白くなるほど握りしめて耐えた。顔は苦悶で歪み、歯を食いしばりすぎて顎の筋肉が痛むほどだった。冷や汗が眉を伝って目元に流れ、アイシャドウやマスカラがドロドロに滲んでいくのが自分でも分かった。

お腹の中の痛みは波のように満ち引きを繰り返し、その度に私は呼吸を止め、全身を硬直させた。頭の中で「あと10分、いやあと5分……」と時間の交渉を繰り返し、スピーチの内容など一言も頭に入らなかった。隣に座る上司が私の異変に気づいたのか、怪訝な顔でこちらを見た気がしたが、私はそれに反応する余裕すらなく、ただただ下腹部の痛みをこらえるために下を向いて震えていた。

スピーチが終了し、盛大な拍手が沸き起こった瞬間、私は拍手をするフリをしながら、限界寸前の状態で立ち上がった。周囲が退場のために動き出す中、私は不自然に歩幅を狭め、内股のまま、大広間の出口へ向かってすり足で急いだ。ホテルの豪華な廊下を通り抜け、女子トイレに飛び込んで個室の扉を閉めた時、私の括約筋は本当に限界を超えかけていた。 衣服を滑り込ませて便座に座った瞬間のあの圧倒的な解放感は、まさに極上のスリルと紙一重の快感だった。今でも大きなホテルのロビーに行くたび、あのセットアップスーツを冷や汗で濡らしながら耐え抜いた、究極の緊張感を思い出して胸が高鳴る。

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