ドレスコードの裏側(社会人・若手期)
社会人になって数年目、会社の結構フォーマルな懇親会というか、取引先も交えた大きな飲み会があった時のこと。会場はちょっといいホテルの中のレストランで、みんなカチッとした服装をしてた。うちもその日は、黒のタイトな膝丈ワンピースに、ベージュのストッキング、ヒールが7センチもある細い黒パンプスという、慣れない余所行きの格好。髪はハーフアップにして上品なパールのヘアピンで飾ってた。
お酒は強い方だから付き合いでワインやハイボールを何杯も飲んで、笑顔を取り繕って話してたんだけど、冷房がガンガンに効いた部屋のせいで、気づけば膀胱が大変なことになってた。 「あ、これ限界突破するやつじゃん……」
しかし、偉い人のスピーチや挨拶が続いていて、若手の私が席を外せる空気じゃない。この社会的な同調圧力が、尿意をさらに凶暴にする。 テーブルの下で、ストッキングを履いた両脚をきつく交差させて、足首同士を絡め合わせるようにして必死に耐えた。 パンプスの中でつま先を丸め、ヒールに重心を乗せて体を硬直させる。額からじんわりと冷や汗がにじみ、せっかくきれいに仕上げたファンデーションが浮いていくのがわかった。
「次の挨拶が終わったら、絶対に抜け出す……」 心の中で何度もそう交渉したけど、挨拶は一向に終わらない。第三波の凶暴な尿意がお腹を激しく突き上げ、思わず「っ……」と息を呑んで体を折った。手で下腹部を押さえたいけど、テーブルの上だからそれもできない。クラッチバッグを膝の上に置き、それを握りしめる両手が白く強張っていた。
ようやく拍手がおこり、歓談の時間になった瞬間、私は笑顔の仮面を貼り付けたまま席を立った。 しかし、ホテルのトイレはどこも大混雑。女子トイレの前に並ぶエレガントな女性たちの列を見て、私は絶望した。 「絶対に間に合わない。ここで漏らしたら、社会的に死ぬ……」
私は非常口の扉を押し開け、非常階段を駆け下りた。ヒールがコンクリートをカンカンと鳴らし、その音が焦りを倍増させる。外に出ると、ホテルの裏手にある薄暗い業務用通路と、ゴミ置き場へ続く細い路地があった。 路地の奥はビルの隙間で真っ暗。生ゴミの匂いと湿ったアスファルトの匂いが漂う、都会の死角。
「ここで、するしかない……!」
見つかれば一発アウト。だけど、もう1秒も耐えられない。私は暗闇のビルの壁に背中を預け、ワンピースの裾を胸のあたりまでたくし上げた。ストッキングとショーツを一緒に掴み、太ももの半ばまで一気に引き下げる。 ヒールを泥混じりのアスファルトに踏み締め、膝を震わせながら腰を落とした。
「はぁっ……んん……っ」
解放の瞬間、ものすごい勢いでおしこが迸り、アスファルトの上を激しく濡らした。 暗い路地裏に響く生々しい水音。背徳感と、社会のルールを足蹴にしているようなスリルが混ざり合い、頭の芯が痺れるような強烈な快感が全身を突き抜けた。パンプスのつま先が滑りそうになるのを壁を手で支えながら必死に堪える。その瞬間、自分が生きている実感を強く感じていた。
出し切った後、濡れた肌にストッキングを張り付かせながら、乱れた髪を直した。 煌びやかなパーティー会場のすぐ裏の汚い路地裏で、ドレス姿のまま放尿したあの夜。そのギャップとスリルは、うちの社会人生活の中で最大のスパイスになったのは間違いいないじゃん。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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