午後の製品発表会
蒸し暑い7月の午後2時過ぎ、大手IT企業の大回議室で行われた新製品のプレス発表会でのことだ。私は機材担当として、ステージの端のミキサー卓の後ろに控えていた。会場は報道陣や取引先で満員になり、エアコンの冷房が追いつかないほどの熱気に包まれていた。プレゼンテーターを務めるのは、広報部のエースである佐藤さんだった。
彼女は上質なシルク混の白いとろみブラウスに、タイトなネイビーのウールペンシルスカート、そしてベージュの8センチピンヒールという完璧なオフィススタイルで壇上に立っていた。ハーフアップにまとめられた黒髪は艶やかで、小ぶりなパールのピアスが揺れていた。しかし、ぷれぜんが始まって10分ほど経った頃、彼女の様子が急変した。
エアコンが稼働しているにもかかわらず、彼女の額には大粒の汗が滲み、きれいにファンデーションが施された顔は急速に青ざめていった。マスカラとアイライナーが涙と汗でじわじわと滲み、目尻のあたりが黒く汚れている。その完璧だったメイクの崩れが、彼女の極限状態を如実に物語っていた。プレゼン資料を映すプロジェクターの光の中で、彼女の指先は指示棒を握りしめたまま小刻みに震え、タイトスカートの中で内ももを激しく擦り合わせるようにして、細い両脚を不自然なほど密着させてクロスさせていた。足首がせわしなく交差し、ピンヒールが木製の演台にカツカツと不規則な音を立てていた。苦痛に歪む唇からは、ファンデーションの剥げた素の唇の乾きが見て取れ、眉間には深くシワが刻まれていた。
下腹部を貫くのは、まさに腸壁が悲鳴をあげるような鈍痛と、逃げ場のない便意の波だった。括約筋はすでに限界値に達しており、まるで高圧のダムの門を極限まで薄い膜一枚でせき止めているかのような感触だ。頭の中では必死の交渉が繰り返されていた。「あと5分でこのスライドが終わる、そしたら次の担当に交代できる、だから頼むから静まってくれ」「いや、今立ったら絶対に間に合わない、お尻に力を入れたまま歩けるわけがない」。心臓の鼓動は早鐘のように打ち鳴らされ、呼吸は浅く荒くなる。役員たちがずらりと並ぶ重苦しい空気の中、もしここで途中退席すれば、これまでの準備もキャリアも一瞬で崩れ去るという社会的な圧力が、彼女を演台から動けなくしていた。限界の波が押し寄せるたび、彼女の喉の奥からは「くっ……」という押し殺した短い吐息が漏れ、お腹に走る激痛に耐えかねて、腰がわずかに引けてお尻が突き出るような不自然な姿勢になっていた。
私はミキサー卓から目が離せなかった。彼女が必死にこらえているお尻の緊張、スカートのシワが激しく動く様子、そして漏れそうなのを隠そうとする必死の笑顔の裏の絶望。見てはいけないものを見ているという罪悪感で、私の胸は激しく高鳴り、手のひらに冷や汗がにじんだ。
発表会が終わるチャイムが鳴った瞬間、彼女は挨拶もそこそこに、指示棒を持ったまま、お尻をかばうように極端な内股でステージを降りた。競歩のような不自然な早足で、廊下の突き当たりにある多目的トイレへと消えていった。今でもあのプレゼンソフトの起動音を聞くたび、あの時の冷や汗の匂いと、佐藤さんの極限の表情を思い出して胸が苦しくなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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