渋滞の長距離高速バス
お盆休みの帰省ラッシュがピークを迎えた8月半ばの午後5時過ぎ、私は東京から地方都市へ向かう長距離の高速路線バスの中にいた。道路は大規模な事故渋滞に巻き込まれており、バスは完全に停止したまま、炎天下の高速道路上で立ち往生していた。冷房は効いているものの、乗客たちの疲労と焦燥感で車内の空気は重く沈んでいた。……その時、通路を挟んだ斜め前の席に座っていた女性が目に入った。
年齢は30代前半の品のあるOL風の女性。薄いベージュのサマーニットに、白いタイトなコットンロングスカートを穿いていた。髪はハーフアップにまとめられ、ブランド物の革製トートバッグを抱えていた。しかし、渋滞が始まって1時間が経過した頃から、彼女の様子が明らかにおかしくなった。
シートの上で、彼女は両手で下腹部を抱えるように前かがみになり、お尻を浮かせたり沈めたりしながら激しく身を捩り始めたのだ。バスの車内トイレは、故障中のため使用禁止という張り紙が貼られており、次のパーキングエリアまでは渋滞でいつ到着できるか全く分からない。その絶望的な状況が、彼女を精神的に極限まで追い詰めていた。彼女の額や首筋には大量の脂汗がにじみ、完璧に整えられていたメイクが汗で崩れ、ファンデーションがまだらに浮き上がっている。マスカラが滲んで目元が薄暗く汚れ、唇は恐怖と苦痛で白く血の気を失っていた。
彼女は、急激な腹痛と猛烈な便意の波に襲われていた。バスという逃げ場のない密室、そして静まり返った車内で声を上げることへの社会的な障壁が、彼女を座席に縛り付けていた。腸の中でガスがゴロゴロと鳴るたび、彼女はスカートの上からお尻を強く手で押さえ、括約筋を限界まで締め付けるように内ももを激しく擦り合わせていた。時折、「う、ぅ……」と熱い吐息が口元から漏れ、その背中が弓なりに引きつる様子から、限界が近いことが痛いほど伝わってきた。
私はその光景に激しく心を動かされ、目が離せなくなった。彼女が絶望的な便意に悶えながら、白いスカートの裾をギュッと握りしめて震える様子。見てはいけないものを見てしまっているというスリルで、私の喉は乾き、心臓がバクバクと高鳴るのを抑えられなかった。
渋滞の列がわずかに動き、バスが非常口用の路肩スペースに停車した瞬間、彼女は運転手のもとへ駆け寄り、消え入るような声で何かを懇願した。運転手に付き添われ、腰を引いた極端な内股のままバスを降り、高速道路脇の緊急用簡易トイレへと駆け込んでいった。今でも高速道路の渋滞表示を見るたび、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸が苦しくなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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