排泄物語

停電の新幹線個室前

投稿者: エピソード101-1502分で読めます閲覧 1,8593.8(15件)

蒸し暑い8月の午後3時過ぎ、満席の東海道新かん線の下り列車のデッキでのことだ。沿線での落雷による停電が発生し、列車は駅と駅の間で緊急停車してしまった。エアコンが停止した車内は急速に温度と湿度が上昇し、乗客たちの不安なざわめきで満ちていた。私は少しでも涼しい風を求めてデッキへ移動していた。……その時、11号車の多目的トイレの扉の前で、限界の表情で立ち尽くしている女性が目に留まった。

年齢は30代前半の、出張帰りとおぼしきキャリアウーマン風の女性。上質なグレーのノースリーブサマーニットに、タイトな白いペンシルスカート、そしてベージュの7センチヒールを履いていた。髪はハーフアップにまとめられ、小ぶりのパールのイヤリングが揺れていた。しかし、停電から20分が経過した頃から、彼女の様子が急変した。

デッキの狭い空間で、彼女は両手で白いスカートの裾を強く握りしめ、内ももを激しく擦り合わせるようにしてもじもじと身を捩り始めたのだ。新幹線のトイレは停電中でも使用可能だが、個室の中にはすでに別の乗客が入っており、なかなか出てくる気配がない。その状況が彼女を焦らせていた。額や首筋からは大粒の脂汗が流れ落ち、綺麗に整えられていたメイクが汗でじわじわと崩れ、マスカラが滲んで目元が薄黒く汚れている。眉間には深いシワが刻まれ、苦痛で顔が青ざめていた。

彼女は、急激な下痢を伴う激しい便意と戦っていた。停電で静まり返ったデッキという密室、そして他人の目を気にする社会的な重圧が彼女をその場に縛り付けていた。お腹の中で大きな音が鳴るのを隠すように、彼女はブランドバッグでお腹を強く押さえ、お尻の筋肉を限界まで締め付けるようにして、ヒールの踵を小刻みに上下させて震えていた。

私はその様子から目が離せなくなり、喉が乾いて仕方がなかった。普段は仕事ができそうな上品な大人の女性が、停電のデッキで極限の便意に耐えながら、タイトスカートの中で脚をきつくクロスさせて震える仕草。見てはいけないものを見ているという背徳感で、心臓が激しく高鳴っていた。

ようやくトイレのドアが開き、中の人が出てきた瞬間、彼女は挨拶もそこそこに滑り込むように個室へと消えていった。閉まったドアの向こうからかすかに衣擦れの音が響いた時の、あの切迫した気配が忘れられない。今でも新幹線のデッキに立つたび、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた独特の緊張感を思い出して興奮が蘇る。

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