冬の森のカメラマン
粉雪の舞う1月の午前11時過ぎ、私は奥多摩の深い森の中にある野鳥観測ポイントにいた。冬の希少な鳥を撮影するため、防寒対策用のテントの中に三脚を据えてじっと待機していた。森の中は静寂に包まれており、厳しい寒さが足元から忍び寄っていた。最初の異変は、水筒の温かいコーヒーを飲み干した直後の、下腹部に走ったズキリとするような急激な腹痛だった。
「鳥がいつ現れるか分からないし、機材を置いてその場を離れるわけにはいかない」という焦りが、私をテントの中に縛り付けた。
私はその日、本格的な登山用の防寒マウンテンパンツに、厚手のタイツ、防寒トレッキングブーツを履いていた。しかし、便意の第一波が襲った瞬間、全身から冷たい汗が噴き出し、防寒着の下の背中が凍りつくように冷たくなった。顔の血の気は完全に引き、すっぴんの肌には鳥肌が立っていた。私はテントの狭い椅子の上で両膝をきつく合わせ、内ももを強く擦り合わせるようにお尻の筋肉を限界まで引き締めた。かめらを握る両手は激しく震え、指先が凍りついたように動かない。
人里離れた冬の山林という、物理的にトイレが存在しない極限の状況が私を追い詰めていた。もしここで決壊すれば、高価な登山用防寒着を汚すだけでなく、同行のカメラ仲間にすべてを知られてしまう。その社会的絶望感から、心臓は早鐘のように激しく打ち鳴らされ、息を吸うことすら困難になっていた。便意の波は容赦なく第二波、そしてより強力な第三波へと達しており、下腹部をギシギシと激しい痛みが襲うたび、私はブーツのつま先を地面に強く押し当てて、括約筋の感覚が麻痺しそうになるのを必死で耐えた。
恥ずかしさと、いつ決壊してもおかしくない大自然での極限の限会状態に耐えるスリルに、頭の芯がジーンと痺れるような熱さを感じていた。
ようやく鳥の撮影を諦め、機材をまとめてテントを出た瞬間、急な運動で腸が大きく動き、下腹部に凄まじい衝撃が走る。私は腰を引いて両手でお腹を抱え、内股のままよろよろと森を抜け、駐車場にある仮設トイレへと走り込んだ。個室の便座に座り、温かいものが一気に解放された瞬間の、脳が痺れるほどの圧倒的な解放感。今でも冬の山道を歩くたび、あの時の冷や汗の匂いと、壊れそうだったお尻の激痛を思い出して胸がキュンとする。
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