深夜の長距離フェリーデッキ
冷たい雨が降る11月の深夜11時過ぎ、瀬戸内海を航行する長距離ふぇりーの2等大部屋でのことだ。大部屋は修学旅行生や一般の観光客で雑魚寝状態となっており、消灯後の薄暗い室内には寝息だけが響いていた。私は寝付けずにロビーの自動販売機コーナーにいた。……その時、ロビーのソファの端で、限界の様子でうずくまっている同僚の女性社員が目に入った。
年齢は20代半ばの女性。上品なオフホワイトのニットワンピースに、黒のストッキングを穿いていた。髪はハーフアップにまとめられていたが、消灯からしばらく経った頃、彼女の様子が急変した。
ロビーの薄暗い照明の中で、彼女は両手で自身のバッグをお腹に強く押し当て、両膝を限界まできつく合わせて内ももを激しく擦り合わせるようにしてもじもじと身を捩り始めたのだ。フェリーのトイレはロビーの反対側の端にあり、深夜の静まり返った船内で長い廊下を歩いて移動することへのためらいが、彼女をその場に縛り付けていた。彼女の額や首筋には大粒の脂汗が流れ落ち、綺麗に施されたメイクが汗で崩れ、アイライナーがにじんで目元が黒く汚れている。顔は真っ白に青ざめていた。
彼女は、急激な冷えによる猛烈な腹痛と便意の波に襲われていた。大部屋の他の乗客を起こしてしまうかもしれないという社会的なプレッシャーが、彼女の行動を遅らせていた。腸の中でガスがゴロゴロと鳴るたび、彼女はストッキングの上からお尻を強く締め、パンプスの踵をガタガタと床に打ち付けて震えていた。
私はその様子から目が離せなくなり、心臓の鼓動がドクンと激しく高鳴るのを感じた。普段は綺麗に着飾っている彼女が、深夜のフェリーのロビーで極限の便意に耐えながら、脚をきつく合わせて震える仕草。見てはいけないものを見ているという背徳感と限会状態の気配に、私の胸は激しく高鳴っていた。
ついに耐えかねた彼女は、バッグでお腹を抱えながら立ち上がり、極端な内股のすり足のまま、廊下の奥にあるトイレへとよろめきながら急いでいった。今でもフェリーのエンジン音を聞くたび、あの時の彼女の限界の表情と、忘れられない極限の我慢の姿を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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