国立公園の山みちの迷子
粉雪の舞う11月の午後2時過ぎ、私は信州の国立公園にある山みちを歩いていた。看板を見落としてルートを外れてしまい、周囲には人影もなく、スマホの電波も届かない鬱そうとした森の中で迷子になってしまった。最初の異変は、寒風の中で道を探し始めてから30分後、下腹部に走ったズキリとするような急激な腹痛だった。
「道が分からないし、どこにトイレがあるかも分からない……とにかく歩き続けなければ」という極限の恐怖が、私を支配した。
私はその日、厚手のマウンテンパーカーに、タイトな黒のストレッチパンツ、登山用のブーツを履いていた。しかし、便意の第一波が襲った瞬間、全身から冷たい汗が噴き出し、背中が凍りつくように冷たくなった。顔の血の気は完全に引き、すっぴんの肌には鳥肌が立っていた。私は立ち止まり、両脚を限界まできつくクロスさせて太もも同士を強く擦り合わせ、お尻の筋肉を限界まで引き締めた。
大自然の中で迷子になったという物理的な状況、そして誰にも助けを求められないという絶望が私を追い詰めていた。もしここで決壊すれば、この山から生きて戻れないかもしれないという極度の精神的プレッシャーが、便意をさらに加速させていく。心臓は早鐘のように激しく打ち鳴らされ、息を吸うことすら困難になっていた。便意の波はもはや誤魔化しの利かない第三波に達しており、下腹部をギシギシと激しい痛みが襲うたび、私はブーツのつま先を地面に強く押し当て、括約筋が決壊寸前の水門のようになるのを必死に耐えた。
恥ずかしさと、いつ決壊してもおかしくない大自然での極限の限会状態に耐えるスリルに、頭の芯がジーンと痺れるような熱さを感じていた。
ようやく林道の出口が見え、管理事務所の避難小屋へたどり着いた瞬間、私は最後の力を振り絞ってトイレへと滑り込んだ。個室の便座に座り、お腹の痛みが一気に解消された瞬間の、頭の芯がとろけるような圧倒的な解放感。今でも冬の山道を歩くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、下腹部の激痛を思い出して胸がキュンとする。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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