年次かぶぬし総会の演壇
蒸し暑い6月の午前10時過ぎ、大手製造業の本社ビル大ホールで行われた年次かぶぬし総会でのことだ。会場は多くの株主や報道関係者で満席となっており、質問を寄せる株主たちの厳しい視線とフラッシュの光で張り詰めた緊迫感に満ちていた。私は記録係として演壇の斜め後ろに座っていた。……その時、演壇の議長席に座っていた女性常務の様子がおかしいことに気づいた。
年齢は40代前半のキャリアエグゼクティブ。仕立ての良い濃紺の高級スーツに、白いシルクブラウス、そして黒のストッキングと7センチのピンヒールを完璧に履きこなしていた。髪は艶やかなハーフアップで、小ぶりのパールのピアスが揺れていた。しかし、株主からの厳しい質問が続いていた頃、彼女の様子が急変した。
議長席の椅子に座ったまま、彼女は両膝を限界までくっつけ、内ももを激しく擦り合わせるようにしてもじもじと身を捩り始めたのだ。株主総会の議長代理という重大な社会的役割、そしてテレビ中継や報道陣のカメラが回っているという極限のプレッシャーが、彼女をその席に縛り付けていた。彼女の額や首筋には大粒の冷や汗がにじみ、完璧に施されたメイクが汗で崩れ、アイライナーがにじんで目元が黒く汚れている。顔は白く青ざめていた。
彼女は、急激な腹痛と猛烈な便意の波に襲われていた。総会の静寂の中、腸の中でガスがゴロゴロと鳴るたび、彼女は手元の総会資料でお腹を強く押さえ、お尻の筋肉を限界まで引き締めていた。時折「くっ……」と喉の奥で押し殺した吐息が漏れ、腰がわずかに浮いてお尻が突き出るような不自然な姿勢になっていた。足元はパンプスの踵を小刻みに上下させて震えていた。
私はその様子から目が離せなくなり、心臓の鼓動がドクンと激しく高鳴るのを抑えられなかった。普段は威厳と知性に満ちた彼女が、株主総会の極限状態で便意に悶え、脚をきつく合わせて震える仕草。見てはいけないものを見ているという背徳感と堅張感で、手のひらに冷や汗がにじんだ。
総会が無事に終了し、散会の宣言が行われた瞬間、彼女は挨拶もそこそこに、資料を持ったまま極端な内股のすり足のまま、演壇を降りて裏手の役員用控室のトイレへと消えていった。今でも総会の開始ベルを聴くたび、あの時の彼女の限界の表情と、忘れられない極限の我慢の姿を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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