排泄物語

凍える朝の限定ショップ

投稿者: はるか3分で読めます閲覧 5514.0(4件)

あれは私がまだ十六歳の冬、忘れもしない十二月の刺すような寒さの土曜日の朝だった。大好きなアイドルグループの限定コラボカフェの整理券を求めて、私は始発の電車に乗って都心の路地裏へとやってきた。朝の六時半、気温はわずか三度。ビルの谷間から吹き抜けるビル風は容赦なく、私の制服の薄いストッキングを通り抜けて、むき出しの太ももを冷え切らせていた。お目当ての整理券を手に入れようと集まったファンの列は、開店前だというのにすでに数十メートルにも及ぶ長い行例になっていた。

私はウール混のダッフルコートのフードを深く被り、赤と緑のチェックの長いマフラーを首元に何重にも巻きつけて、かじかむ手でスマートフォンを握りしめていた。ヘアピンで留めた前髪が風に乱れ、寒さで耳や鼻の先が赤くなっているのが自分でもよく分かった。最初の異変は、列に並んでから一時間が経過した午前七時半頃だった。朝一番で飲んだホットココアが、この極寒の空気の中で急速に水分となり、私の下腹部に溜まり始めていた。最初は「少しトイレに行きたいな」という程度の軽い予兆に過ぎなかった。しかし、周囲を見渡しても近くに公衆トイレはなく、一度列を離れれば最後、この一時間半の努力が無駄になり、限定グッズは手に入らなくなる。社会的かつ心理的な見えない檻が、私をその場に縛り付けた。

午前八時を過ぎた頃、第二波の強烈な尿意が押し寄せてきた。下腹部の奥底で、何かが決壊寸前の水門のようにギリギリと音を立てて自己主張を始める。私は心の中で、自分自身と一つの「契約」を結んだ。「あと三十分。あと三十分だけ耐え抜けば、整理券が配られてこの檻から解放される。そうしたら、駅の多機能トイレに駆け込めばいい」。その契約を胸に、私はローファーの踵を地面に強く押し当て、両膝をぴったりとくっつけた。しかし、寒さは残酷だ。身体の芯から震えが止まらず、その振動が直接、限界に近い膀胱へと響き渡る。スマートフォンの画面を見る余裕すらなくなり、画面を握る両手は白く強張り、指先は感覚を失っていた。

限界の第三波は八時二十分、整理券配布のわずか十分前に私を直撃した。もはや立っていること自体が奇跡に近い。私は内もも同士を限界まで擦り合わせ、お互いの太ももを強く圧迫し合うようにして交差させた。じわりと額から冷や汗がにじみ、せっかく入念にしてきたスクールメイクが、脂汗と涙で薄く滲んでいくのを感じた。顔の筋肉は恐怖と焦りで強張り、呼吸は浅く「はぁ、はぁ」と白いため息を吐き出すことしかできない。コートの下でスカートの裾をぎゅっと握りしめた拳は小刻みに震え、もう一歩でも動けば全てが崩壊する極限状態だった。今ここで漏らせば、私の高校生活は終わる。その凄まじい社会的なプレッシャーが、私の括約筋を極限まで締め付けさせていた。

「お願いします、早く配って……」。声にならない祈りと、狂おしいほどの尿意の波。ついに八時半になり、スタッフが整理券を配り始めた。私の手元に券が渡された瞬間、私はまるでロボットのようにぎこちない、両足をクロスさせた不自然な足取りで列を離脱した。一歩進むたびに波が押し寄せ、下腹部が引き裂かれるような鈍痛に襲われたが、頭の中で「契約完了まであと百メートル」と唱え続け、駅の改札内トイレに滑り込んだ。

個室の鍵を閉め、便座に腰を下ろして温かい水流を一気に解放した瞬間、頭の芯がとろけるような凄まじい快感と安堵感が全身を駆け巡った。あれから十年以上が経ち、街中で長い行例を見るたびに、あの十二月の凍える朝の絶望的な下腹部の痛みと、全てを失う寸前のひりつくようなスリルを思い出して、今でも股の奥が小さく疼くのだ。

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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