排泄物語

助手席の長い渋体

投稿者: はるか3分で読めます閲覧 6374.4(5件)

十九歳のゴールデンウィーク、サークルの友人たちと計画した伊豆への日帰りドライブ旅行でのことだ。初夏の輝くような日差しが降り注ぐ中、私たちはレンタカーを借りて意気揚々と高速道路を走っていた。私は助手席に座り、カジュアルなデニムのショートパンツに薄手の白いノースリーブのサマーニットを着て、髪は高めのポニーテールに結んでいた。耳元で揺れる大ぶりのピアスが、旅の始まりの高揚感を象徴しているようだった。しかし、その楽しかった旅の空気は、神奈川県内の高速道路で発生した大渋体によって一瞬にして凍りつくことになった。

事故と行楽が重なった結果、掲示板には「この先二十キロ、通過に二時間以上」という絶望的な文字が表示された。車は完全に停止し、数分に数メートル進むかどうかという極限の遅滞が始まった。異変が訪れたのは、渋体に捕まってから約四十分後、お昼過ぎの一時半頃だった。車に乗る前にサービスエリアで飲んだ大きなサイズのアアイスラテが、車内のエアコンの冷気と相まって、私の膀胱に音もなく忍び寄ってきたのだ。最初は「次のパーキングで入ればいいや」と軽く考えていたが、ナビに表示される次の休憩所までの距離はわずか五キロであるにもかかわらず、到着予定時刻は一時間後を示していた。

私は愕然とし、心の中で自分自身と厳しい「自己契約」を交わした。「絶対に友達の前で『トイレに行きたい』なんて言わない。男友達も同乗しているこの空間で、そんな恥ずかしい告白をするくらいなら、このまま耐え抜いてみせる」。車内は音楽が流れ、友人たちが楽しそうにお喋りをしている。その楽しげな雰囲気を壊したくないという強烈な社会的な同調圧力が、私を無言の沈黙へと追い込んだ。尿意の第二波が襲ってきたとき、私は助手席のシートに深く背中を預け、シートベルトが下腹部を圧迫しないよう、右手でベルトを引っ張って隙間を作った。両手はエアコンの冷気ではない、冷や汗でしっとりと湿り、デニムの裾を握りしめる指先に強い力がこもる。

午後二時半、出発から二時間が経過し、尿意は完全に許容量の限界を超えた第三波へと突入した。膀胱がパンパンに膨らみ、破裂寸前のゴム風船のようにお腹の奥で脈打っている。私は助手席で足を不自然に組み替え、内もも同士をこれでもかと密着させ、腰をわずかに浮かせるようにして座り直した。エアコンの風が当たっているはずなのに、顔からはじわりと脂汗が流れ落ち、マスカラやアイシャドウが目の周りで薄くヨレていくのが分かった。顔を引きつらせ、窓の外の景色を見つめるふりをしながら、唇を血がにじむほど強く噛みしめて声を殺した。隣で運転する男友達が「ハルカ、大丈夫?なんか静かだけど」と声をかけてきたが、私は「うん、ちょっと眠くて……」と、掠れた声を絞り出すのが精一杯だった。声帯を震わせるだけでも下腹部が緩みそうになり、全身に鳥肌が立つ。

頭の中で「あと三キロ、時速五キロだからあと三十六分……」と狂ったように計算を繰り返し、一秒一秒をやり過ごした。自己契約の重みと、もしここで粗そうをしてしまったら彼らとの関係がすべて終わるという絶望感が、私の括約筋を最後の糸一本で繋ぎ止めていた。

ようやくパーキングエリアの減速車線に入ったとき、車が完全に止まる前にドアを開けて飛び出したい衝動を必死に抑え込んだ。車が駐車スペースに停まると同時に、私はもつれる足を引きずるようにして車外へ出た。内ももを強く擦り合わせる、ガニ股の一歩手前のような不自然な姿勢で女子トイレへ急いだ。

個室の便座に滑り込み、熱い尿が勢いよくほとばしる音が響いた瞬間、頭が真っ白になり、意識が遠のくほどの圧倒的な解放感に満たされた。今でも高速道路で赤いブレーキランプの長い列を見るたびに、あの助手席で味わった窒息しそうな恐怖と、下腹部を貫く激しい緊迫感を思い出して胸が締め付けられる。

---

― この話は、これにて ―

この話を評価する

平均 4.4(5件)

掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

はるか」の他の話

3.854閲覧 2,564

九十分の社会的ラビリンス

二十歳の秋、大学の友人たちと訪れた有名なテーマパークでの体験だ。十月下旬の少し肌寒い夕方、ハロウィンの装飾で彩られた園内は多くの人でごった返していた。私たちは園内屈指の人気を誇る絶叫アトラクションの列に並んでいた。待ち時間は「九十分」。私は…

3.631閲覧 1,282

逃げ場なき高速バスの渋体

二十六歳の秋、実家への帰省のために利用した夜間の高速バスでのことだ。十月の週末、連休の初日ということもあり、バスは満席だった。私は窓側の席に座り、リラックスできるゆったりとしたロングスカートにスウェットを合わせ、足元はスニーカー、髪は後ろで…

4.121閲覧 1,071

出発ロビーの限界契約

二十八歳になった今年の夏、出張のために訪れた羽田空港での出来事だ。八月の長期休暇シーズンということもあり、出発ロビーは旅行客で溢れ返っていた。私が乗る予定の便の保安検査場前には、蛇行しながら果てしなく続く長蛇の行例が形成されていた。私は仕事…

4.09閲覧 551

凍える朝の限定ショップ

あれは私がまだ十六歳の冬、忘れもしない十二月の刺すような寒さの土曜日の朝だった。大好きなアイドルグループの限定コラボカフェの整理券を求めて、私は始発の電車に乗って都心の路地裏へとやってきた。朝の六時半、気温はわずか三度。ビルの谷間から吹き抜…

関連する話

3.8427閲覧 1.9万

【観測記録・春】上野公園の満開の下、宴会集団から出た限界個体の記録

4月2日、上野恩賜公園。晴れ、風弱し。ソメイヨシノは満開を2日過ぎた頃で、園内は夕方の時点で既に飽和状態であった。私の定点は噴水広場寄りのベンチ。ここは公衆トイレへの動線が交差する要衝であり、観測には最適である。花びらが夕風に乗って絶えず舞…

3.7918閲覧 1.9万

【観測記録・秋】ハロウィン渋谷、ゾンビメイクの女性が本物の緊急事態になるまで

10月31日、渋谷センター街周辺。晴れ、夜間気温15度。ハロウィン当夜の渋谷は、観測者にとって年間最大のフィールドである。ただし近年は規制強化で路上飲酒が減り、事例数は減少傾向にある。それでも仮装した成人たちの密度は相変わらず高く、路地とい…

3.7448閲覧 1.6万

河川敷の草むらで、犬の散歩の人が来たあの三分間

金曜の深夜一時、残業帰り。あの公園の夜から、私は遠回りして帰るようになってしまった。まっすぐ帰る道より、少しだけ遠い道を選ぶこと。それが自分でも気づかないうちに、習慣という名の秘密になっていた。 その日は多摩川の河川敷を選んだ。土手の下の草…

4.1738閲覧 1.5万

夏フェスのトイレ百人待ちとか無理。森でしてきた女の言い分

てかさ、夏フェスのトイレ問題どうにかならんの?って毎年言ってるんだけど。去年の山のフェス、昼のピークで仮設トイレ百人待ちなんよ。百人て。推しのステージ三十分後に始まるのに並んでたら人生終わるじゃん。 しかもうち、その時点でもう下腹やばくてさ…

読むだけ、で終わらせない

排泄プレイが好きな女の子は、本当にいる。

aune(アウネ)は、性癖を打ち明けてつながるマッチングサービス。「排泄系が好き」と公言している女の子が実際に登録しています。体験談を読むだけじゃなく、あなた自身の体験をつくりに行きませんか。プレイ相手を探すなら、最初から性癖が一致する相手と。

auneで排泄好きの相手を探す

PR・広告リンクを含みます