九十分の社会的ラビリンス
二十歳の秋、大学の友人たちと訪れた有名なテーマパークでの体験だ。十月下旬の少し肌寒い夕方、ハロウィンの装飾で彩られた園内は多くの人でごった返していた。私たちは園内屈指の人気を誇る絶叫アトラクションの列に並んでいた。待ち時間は「九十分」。私はお気に入りのフリルがついた黒い膝丈のワンピースに、薄手の黒タイツを合わせ、歩きやすいヒールのあるショートブーツを履いていた。髪はハーフアップにしてお気に入りのリボンバレッタで留めていた。並び始めた時は元気だったが、その巨大な「待ち列」という名の迷宮こそが、私にとっての試練の場となった。
列の中盤を過ぎた頃、並び始めてから五十分ほど経った時だった。突然、下腹部にずしりとした重みが走った。アトラクションに乗る直前の緊張感も手伝ってか、尿意の第一波が私を襲ったのだ。「まだあと四十分もある……」。列はロープできっちりと区切られており、引き返すこともできず、途中で列を抜ければまた最初から並び直さなければならない。周囲にはカップルや学生グループがひしめき合い、楽しげに笑い声を上げている。この社会的檻の中で、「トイレのために列を抜ける」と言い出すことは、一緒にいる友人たちの楽しい時間を台無しにすることを意味していた。
私はその場に留まり、自分自身と「契約」を結んだ。「ここまで並んだのだから、絶対に乗り切る。アトラクションを終えて、出口の目の前にあるトイレに行くまでは一滴も漏らさない」。しかし、尿意の第二波は容赦なく押し寄せた。列が数歩進むたびに、ブーツの踵を踏み出す微小な振動がダイレクトに膀胱へ伝わり、火花が散るような激痛が走る。私はワンピースの上から目立たないよう、小さめのショルダーバッグをお腹の前に抱え込み、両手でバッグを押し当てるようにして下腹部を圧迫した。手の平には冷たい汗がにじみ、バッグのストラップを握りしめる指が強張っていた。
並び始めて八十分、アトラクションの入り口が見えてきた頃、私の尿意は極限の第三波に達していた。すでに内股を交差させなければ立っていられず、片足に体重をかけてはもう片方の膝を内側に入れ込むようにして、もじもじと下半身を動かし続けた。額やこめかみからは脂汗が流れ、可愛いリボンバレッタの下の髪が汗で額に張り付いていた。メイクは汗で完全に流れ落ち、鏡を見るまでもなく顔面蒼白で目は虚ろになっていたはずだ。呼吸は苦しく、一呼吸置くごとに膀胱の括約筋が「もう限界だ」と悲鳴を上げる。友人たちのお喋りに対しても、ただコクコクと人形のように頷くだけで、表情は引きつり、言葉を発することすら不可能な状態だった。
「あと少し、乗り場まであと少し……」。何度も頭の中で自己契約の呪文を唱え、括約筋に意識のすべてを集中させた。社会的体裁を守るためだけに、私は膀胱の破裂寸前の痛みに耐え続けた。アトラクションに乗り込み、シートベルトがきつく下腹部を締め付けた瞬間は、あまりの刺激に白目をむきそうになったが、恐怖よりも尿意の絶望が勝っていた。
アトラクションが終了し、安全バーが上がると同時に、私は友人を置いて出口へと脱兎のごとく走り出した。奇妙に腰を落とし、太ももを密着させた姿勢のまま、劇場の裏手にあるトイレへと転がり込んだ。
個室の便座に座り、限界まで張り詰めていた膀胱を緩め、熱い水流が解き放たれた瞬間、全身の毛穴が開くような恍惚感が私を支配した。今でもアトラクションの長い行例を見るたびに、あのハロウィンの夜の、逃げ場のない迷宮での壮絶な我慢と、全身が震えるほどのスリルを思い出して股の奥がキュンと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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