「お手洗い貸して」と駆け込んできたマダムが3歩届かなかった
平日の午後3時、店が一番暇な時間帯。客はゼロ、私はカウンターで珈琲豆の在庫表をつけていた。そこへドアベルが激しく鳴った。 駆け込んできたのは50代くらいのマダム。上等そうな絹のスカーフ、仕立てのいいワンピース、美容室帰りらしき整った髪。近所…
全1921話を収録
平日の午後3時、店が一番暇な時間帯。客はゼロ、私はカウンターで珈琲豆の在庫表をつけていた。そこへドアベルが激しく鳴った。 駆け込んできたのは50代くらいのマダム。上等そうな絹のスカーフ、仕立てのいいワンピース、美容室帰りらしき整った髪。近所…
凍てつくような1月の午後4時過ぎ、期末テスト前の静まり返った高校の図書室でのことだ。外は雪がちらついており、図書室の古いヒーターが低く唸りを上げている。私は世界史の参考書をめくりながら、終わらない復習に追われていた。しんとした室内には、時折…
秋晴れの十月の三連休、午後三時すぎの有名テーマパークでのことだ。大人気アトラクションの前には「百二十分待ち」の看板が掲げられ、長い蛇行する待機列は家族連れやカップルで埋め尽くされていた。私は恋人と並んでいたが、入場の前に購入した大きな冷たい…
季節は冷え込みの厳しい12月のことだ。私はその時、飲食に関連する日常の真っ最中、つまりビルの地下で行われていたクラブイベントのトイレ行列のなかにいた。具体的な時刻は午後8時前。外の空気は冷たく張り詰めており、それが私の感覚を妙に研ぎ澄ませて…
冬の夕方、予備校の面談スペースでのことだ。私は三者面談の順番を待つため、パーテーションの裏の待合席に座っていた。 ……その時、向かいのブースから出てきた女子生徒が目に入った。 年齢は17歳の高校3年生。紺色のブレザーに、チェックスカートの制…
大学2年の頃は、一番「野間(夜間)」の徘徊にハマってた時期。サークルやバイトの人間関係に疲れると、深夜に一人で家を飛び出して、わざと知らない道を何時間も歩き回るのが日課だった。そしていつの間にか、外で用を足すスリルそのものが目的になってたん…
書くか迷ったんですけど、あの子の名誉のためにも「誰でもああなる」って伝えたくて書きます。先々月のライブ終演後の話です。2時間半公演+アンコール、その間みんなトイレ我慢してるので、終演後の女子トイレは毎回戦争になります。本当に。もう修羅場。 …
初夏の午後2時、全校生徒が体育館に集められた学年集会でのことだ。私は冷たい板張りの床に体育座りをしながら、長々と続く先生の話をやり過ごしていた。 最初の異変は、集会が始まってすぐに感じた下腹部をつんとするような軽い尿意だった。 「集会が終わ…
夏の強い日差しが照りつける8月の午後2時前、市民公園の屋外テニスコートでのことだ。気温は34度を超え、コートの照り返しで息苦しいほどの熱気に包まれていた。私は観客用のベンチから練習試合を眺めていた。……その時、コートの端で立ちすくんでいた女…
春の深夜11時半、私はサークルの二次会で利用したカラケボックスの狭い室内にいた。一次会での暴飲暴食と、冷えたハイボールを何杯も一気に流し込んだのが完全に災いしたのだろう。最初の異変は、大音量のカラオケが響く中で突然下腹部を鋭く刺激した強い尿…
初冬の夜9時、私は気になっていた男性とのデートで、都内の高級ワインバーにいた。お洒落なカウンターでカクテルルを飲みながら良い雰囲気を楽しんでいたが、お腹の中で突然、ゴロゴロと不吉な雷鳴が響いた。一次会で食べた慣れないスパイス料理と、冷たい白…
最近うちの畑の脇の農道さ、昼どきになると営業の車が停まるようになったんだ。国道のコンビニが一軒潰れてから、この辺トイレが無くなったからだべ。この前停まったのは白い軽バンで、降りてきたのは若い営業の女の人だった。スーツにパンプスで、車の周りを…
初の全国ツアー、地方の市民会館クラスのホールでのライヴ。この日は私のアイドル人生で最も過酷で、最も尊厳が脅かされた一日だった。冬の乾燥した空気と連日の移動による疲労。それをごまかすために、本番直前に辛めのカレー弁当を胃に詰め込み、さらにエナ…
蒸し暑い七月の火曜日、午後三時すぎの都心の建築設計事務所の大会議室でのことだ。重要な設計コンペの直前確認ミーティングが行われており、冷房の冷気と張り詰めた沈黙が漂う中、私は資料の配布担当としてスクリーンの横に控えていた。……その時、メインで…
冬の放課後、午後5時前の静まり返った図書室でのことだ。私は明日のテストに向けて、窓際の自習スペースで一人黙々と参考書に向き合っていた。 最初の異変は、急に冷え込んできた窓際からの冷気によってもたらされた、下腹部へのつんとするような尿意だった…
秋の夜8時半、私は取引先との接待で、四川中か料理の専門店にいた。辛い麻婆豆腐やスパイスの効いた料理を食べながら、紹興酒を何杯も飲み交わしていた。最初の異変は、最後のデザートが運ばれてくる直前にお腹の奥で起こった、ギューッと差し込むような鋭い…
凍てつくような十二月の第二金曜日、午後九時すぎの進学塾の自習室でのことだ。冬期講習の直前であり、教室内は第一志望校合格を目指す受験生たちの張り詰めた熱気と静寂に包まれていた。私は夜遅くまで自習室に残り、冷たいパイプ椅子に腰掛けて過去問と格闘…
真夏の太陽が照りつける8月の午後4時、私は大学受験のための予備校の夏期講習で行われた、3時間に及ぶ連続模擬試験の最中にいた。冷房が効きすぎた静まり返った教室には、鉛筆の走る音と問題用紙をめくる音だけが反響していた。 最初の異変は、英語の試験…
夏の夜9時過ぎ、サラリーマンや学生で大混雑する居酒屋でのことだ。私は同僚たちとの一次会でビールを大量に飲み、トイレに行こうと通路の奥にある洗面所スペースに向かった。 ……その時、個室のドアのすぐ前で立ち尽くしている女性が目に入った。 彼女は…
肌寒い十一月の土曜日、午後四時過ぎの有楽町にある大型映画館でのことだ。二時間半に及ぶ超大作のクライマックスシーンが上映されており、劇場内は観客たちの緊張した静寂とスピーカーからの大音響で満たされていた。私は上映中に通路側の座席に座って映画を…
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